ダリが好きとか嫌いとかは関係ありません。美術館好きなら絶対行くべき。外観からしてもう、わくわくが止まらない。開館したのは1974年ですが、これこそ最近で言うところの没入体験てやつではないでしょうか?ダリの思考に入り込んだような感覚になれる美術館です。日本からだと気軽に行ける距離ではありませんが、個人的には、この美術館のためにスペインに行ってもいいと思ってます。実際、私が初めてスペインを訪問したときの目的は、ダリ劇場美術館でした。ちなみに「ザ・ダリ(サルバドール・ダリ美術館)」はフロリダで、こちらはダリの故郷スペインの「ダリ劇場美術館」(英語でDali Theatre-Museum)です。
このユニークな外観は、ダリの愛するモチーフである、たまごとパンでデザインされています。「どれがパン?」と思いませんでしたか?

なんだと…これがパンだって…?
この外壁にびっしりついているのがパンなんです!日本人からすると「これがパン?」となりますよね。ええ、私もそう思いました。いったい何パンなわけ?ですが、あら不思議!この美術館を満喫して帰る頃には、「こんな愛おしくて可愛いパンが他にある?!」となってしまうのです。私なんて、このパンのマグネットをお土産で買ってしまいましたよ。友人に配ったら、全員に怪訝な顔されたけどね…。

雨降りタクシー、メイ・ウェストの部屋だけじゃない!見所はすべて。
そもそもこの美術館は、スペインを代表する画家サルバドール・ダリが外観から内装まですべてデザインした美術館。フィゲラスはダリの故郷で、もともと市民劇場だったこの建物はダリの絵が最初に展示された場所でもあります。しかし内戦により劇場は倒壊。そこで当時の市長とダリが、ここを美術館として再建することにしたのです。ちなみにダリは、現在この美術館の地下に埋葬されています。そう、原点に帰ったんです…!くー!うつくしい…!鑑賞ついでにお墓参りもできちゃう、一石二鳥。
約1500点もの作品が展示されているダリ劇場美術館。細部までダリ自身がこだわって作っただけあって、すべてが脳を刺激する上、あちこちに仕掛けがあります。すみずみまで注意して鑑賞するべし!ぼーっと見学していると、いろんなものを見逃してしまいます。気合を入れていきましょう。この美術館はダリの意志により作品名が書かれたプレートがなく、解説もありません。つまり自分の感性で自由に楽しめるのです。自分の作品の解釈を押し付けるのではなく、どう捉えようと、どう楽しもうと自由ですよというダリからのメッセージだと思います。ダリの芸術に対する考え方がそうなのだろうなと。

天才を演じていれば、天才になる。
もとは劇場だったから『ダリ劇場美術館』なのだろうと誰もが推察するものの。それだけではなく、ダリの人生そのものがお芝居みたいに創られていたようにも思えて、これまた絶妙なネーミングだなと。
“If You Act the Genius, You Will Be One. ”
ダリの名言「天才を演じていれば、天才になる」。でも、ダリの作品の繊細さを見ていると、どう考えても天才肌なんですよね、もともと。演じる必要もないのに天才を演じるとは、自信の無さのあらわれか。はたまた、彼が心に描く天才像が現在のパブリック・イメージとなっているダリだったのか。1人の芸術家のみに焦点をあてる個人美術館に訪れると、どうしてもその人間性にも思いを巡らせてしまいます。作品にはその人格が出てしまうので。
肉眼でしか見れない絵画の謎
なんでもWebで見られるようになった昨今ですが、やっぱり現地に行かないと見れないものがこの世にはあるのですよ。ダリ劇場美術館でいうとこれなんですけど。左下のモザイクっぽい作品、何に見えますか?おそらくぼんやり男性が見えるはず。彼はリンカーンです。でも中央に女性の後ろ姿もぼんやり見えるかと。これは本当に不思議なのですが、現地で肉眼で見ると、女性(ダリの妻でミューズのガラ)の後ろ姿にしか見えないんです!リンカーンどこにもいない!ところが、このようにレンズを通すとリンカーンに見える。写真で撮った状態と、肉眼で見る絵がまったく違うんです!えーなんで??不思議すぎて何回も確認してしまいました。ガラの後ろ姿が見たいあなた、現地に行くしかありませんよ…!
それともうひとつ、右下のメイ・ウェストの部屋。これも、所定の位置からレンズを通して見ると、メイ・ウェストになるんです。さっきから「メイ・ウェスト」連呼さしてもらってますが、この美術館に来るまで存在も知りませんでした…。ググったらアメリカの女優さんとのこと。女優の鼻の穴を暖炉?みたいにしちゃってるあたり、流石です。この作品の展示室には、天井にも作品があるので忘れずに見てくださいね!

オーバーツーリズム問題で悩むほど人気の観光地スペインですが、残念ながら日本からの直行便はありません。なぜ?できるだけ一気にバルセロナに近付くためには、パリやロンドン経由で向かうのがおすすめです。シャルル・ド・ゴール空港からだと、バルセロナのエル・プラット空港までは1時間45分程度です。私はイベリア航空を使いました。
バルセロナからフィゲラスまでは、国鉄Renfeだと1時間半ほど。そして駅からさらに15~20分ほど歩きます。この駅で下車する人の多くはダリ劇場美術館に向かうので、彼らについて行くもよし、GoogleMap使うもよしですが、フィゲラス最大の観光スポットでもあるため、あちこちに道案内も出ています。私はこの道案内をたよりに辿り着きました。美術館内は写真撮影OK(フラッシュ・三脚はNG)です。コインで動く作品もあるので、小銭を持っていくのがおすすめ。ミュージアムショップも楽しいですよ!ぜひパンのマグネット探してください。想定される鑑賞時間ですが、長めに見ておいたほうがよいかと。私の場合は、満喫するのに丸1日かかりました。

ダリ劇場美術館 公式サイト
https://www.salvador-dali.org/en/museums/dali-theatre-museum-in-figueres/
日本人はついつい日本語での情報を探しがちですが、開館時間とか休館日などは公式サイトで確認しましょう。それを怠ったせいで、私は今まで数々の失敗をかましてきました…。日本では聞いたことのない謎の祝日による休館、開館時間の変更、改装工事などなど…。公共交通機関も右に同じですが。とにかく確実な情報は公式サイトでしか得られません!どのサイトも言語でEnglishが選べるので、英語が苦手なら翻訳サイトにまるっとコピペして確認しましょう。
余談ですが、タッシェンから出版されている『ダリ全画集』には、この美術館がどうやって創られていったのかなど詳しく載っています。ダリ劇場美術館に行ったあと、興味がわいてきて買ってしまいました…!理解を深めたい方はそちらも読んでみてください。日本語版は廃版のようですが、海外の美術館に行くと、ミュージアムショップに置いていることもよくあります。