旅する世界の美術館ガイド

   美術館のために世界を旅するトラベラーのブログ

クレラー・ミュラー美術館


クレラー・ミュラー美術館は、ゴッホの素晴らしい作品を数多く鑑賞できる美術館です。ゴッホ作品だけでいえばアムステルダムにあるゴッホ美術館に次ぐ所蔵数を誇ります。収集したのは、へレーネ・クレラー=ミュラー。彼女は個人としてはゴッホの最大のコレクターで、ゴッホが今のように世界的な評価を確立する前から収集を始めていました。この美術館で質の高いゴッホ作品をまとめて鑑賞できるのは彼女の功績ですね…!ありがとう、ヘレーネ!もちろんゴッホ以外の作品も素晴らしく、規模はそこまで大きくないものの満足度の高い美術館でした。彫刻庭園にはジャン・デュビュッフェをはじめとする立体作品があり、ぜひ散策の時間も考慮して訪れて欲しいです。アムステルダムからちょっと離れたオッテルローにあるためバスツアーで訪れる方も多いようですが、私は個人で公共交通機関のみを利用して行きました。ちょっと面倒ではありますが、庭園の散策をゆっくりできるメリットを考えると、個人で行くのがおすすめかなと思います。

アムステルダムから自力で、いざクレラー・ミュラー美術館へ!

まず事前準備として、クレラー・ミュラー美術館と、デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園のチケットをオンラインで購入しておきましょう。この美術館はデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園の中にあり、国立公園の入場料を払わなければ美術館に辿り着けないという構造になっているのです。クレラー・ミュラー美術館の公式サイトでは、2つのチケットのセット購入が可能になりました。時間指定はないので、日にちだけ選べば大丈夫!以前はそれぞれ別に購入しなきゃいけなかったのですが、便利になりましたー!

アムステルダム中央駅から電車で行く場合ですが、私はまずNS Intercityという電車の『Nijmegen』行きに乗り、『Ede-Wageningen』駅に向かいました。乗車時間は1時間弱で、車内はとってもきれい。チケットは『9292』のWebサイトもしくはアプリで購入するのが便利です。アムステルダムを拠点に美術館巡りをするなら、このアプリはマスト!マウリッツハイスに行く時にも使えるしね。ルート検索で出てきたルートを選ぶと、そのままチケットを購入可能。もし選んだ時間の電車に乗り遅れても(実体験あり…)、ルートが同じならチケットは使用できます。

(左)Ede-Wageningen駅に到着/(右)ホームからバス停に向かうにはこちら

ここから108番『Apeldoorn via Otterlo』(Otterlo行き)のバスに乗り、『Rotonde』で106番のバスに乗り換えます。バス停『Rotonde』で待つこと5分、黒いワゴン車が静かにやってきました。陽気なおじさんが降りてきて「美術館に行くの?乗りな!」と声をかけてきたので、「乗らない。これはバスじゃない」と警戒感を丸出しにする私。するとワハハと笑って「ほら!106番て書いてあるでしょ」とフロントガラスに掲げている細長い紙を指差すおじさん。車内にはタッチ決済の端末もあり、どうやらバスのようなので乗りました(疑ってすみません…)。朝早いのもあってか乗客は私だけ。心優しきおじさんが「ゴッホはなんで日本で人気なの?」「オランダはどう?」などと話題をふってくれたので、楽しくお話ししていたらあっという間に国立公園の入り口に到着。ここで1回降車して、国立公園の窓口でチケットを提示します。再び乗車して終点のバス停で降りたら道案内の看板に従って徒歩2分、ついに到着です。遠いて…。

(左)終点のバス停…帰りのバス停は道をはさんで向かいにあり/(右)道案内の看板

開館時間より前に到着したところ、人も少なくて静かでした。美術館の敷地内のベンチでサンドウィッチ食べてのんびりしている方も。

(左)美術館へ続く道/(右)正面入り口…開館時はほんとに人がいなかった

館内に入るとすぐにトイレやロッカーがあるので、いろいろ先に済ませてからギャラリー(展示エリア)に向かいましょう。ここでチケットを確認されます。ヨーロッパにしては珍しく日本語のパンフレットがありました。入るとまずは彫刻の展示エリアから。

(左)自然光のある彫刻エリア…ベンチもあり/(右)安定のジャコメッティ

ついに辿り着きました…!ゴッホ『夜のカフェテラス』

彫刻エリアを抜けると素晴らしいコレクションが並んでいるのですが、ここはあとでゆっくり鑑賞することにして、館内が空いているうちにまずはゴッホギャラリーへ。するとついに…!これがずっと観たかった『夜のカフェテラス』!

ついに辿り着きました…!ゴッホ『夜のカフェテラス』!独り占めです!!!

開館と同時だったため、ゴッホギャラリーには誰もいません。本当に一人でじっくり鑑賞できました。離れた場所からそっとカフェを見つめているような、あたたかさも感じられる作品です。ゴッホは自然の風景を描くことが多い印象で、こうした街の営みを描いた作品は少ないかも。構図も素敵です。石畳の道を広く描いているのに対し、明るい夜空は少し窮屈そう。実際、街中から見える夜空ってそんな感じ。観にきてよかったと改めて思いました。隣に展示されていた『郵便配達夫ジョゼフ・ルーランの肖像』も観たかった作品のひとつで、すごく嬉しい。ルーランを描いた作品は何点かあるけど、クレラー・ミュラー美術館所蔵のこの作品が個人的にはお気に入り。配色が完璧。

(左)ゴッホ『郵便配達夫ジョゼフ・ルーランの肖像』/(右)長文解説もゆっくり読めちゃう

制作時期や場所などでカテゴライズされた展示方法となっているゴッホギャラリー。明るい色彩のいわゆるゴッホ作品や、『じゃがいもを食べる人々』のような暗黒時代と称される作品群もあって、多角的に楽しめます。アムステルダムのゴッホ美術館のほうが作品数は圧倒的に多いけど、穴場的魅力はこちらのほうが上かな。ゴッホ美術館はとても素敵だけど、とにかく一日中いつでも混雑しているので…。

(左)誰もいない至福のひととき/(右)暗黒時代の作品も結構好き

ゴッホを満喫していたら、11時過ぎ頃に日本人のバスツアー客が押し寄せてきました…!危なかった!やはり真っ先にゴッホの鑑賞をしておいて正解でした。突然に混み合うゴッホギャラリー。入れ違いにコレクションエリアに移動するジーニアスな私。

(左)ゴッホ“Olijfgaard”(オリーブの木)/(右)ゴッホ“Gezicht op Saintes-Maries-de-la-Mer”

ルドンやアンソール、トーロップなど19世紀の個性派作品もお見逃しなく

こちらのギャラリーは作品数は多くないものの、印象派はもちろん、クラナッハやベルギーの画家アンソールがあったりとポイントを押さえた趣味の良いコレクションです。とくにルドンの『キュクロープス』は必見!ギリシャ神話に出てくる巨人が題材となっています。繊細な色遣いもあいまって、とにかく何だかとっても切ない。物語が浮かんでくるような詩的さと、親密感のある美しい絵画です。また、この美術館はオランダにあるということで、オランダ人画家トーロップの作品も紹介したいです。オランダ領だった時代のジャワ島で生まれたトーロップは、オランダやベルギー、イギリスで活動していました。トーロップの絵画を直接観たのは初めてでしたが、私は好きですね…!帰国して調べてみたら画風の変化が激しい画家のようなので、この絵画を観ただけでトーロップは語れませんが、日本にいると鑑賞する機会はあまりないと思うので、ここでぜひ!

(左)ルドン『キュクロープス』/(右)ヤン・トーロップ“Les rôdeurs”(放浪者たち)

最後に現代アートの企画展エリアを鑑賞。館内の鑑賞にはだいたい2時間くらいかかりました。ちょうどランチタイムとなり館内のレストランはバスツアー客でいっぱいになっていたので、彫刻庭園内のレストランに向かいます。

(左)庭園Map…広すぎる庭園にしばし唖然/(右)庭園内には案内板も出ているのでご安心を

庭園内にあるレストランに到着。美術館内のレストランと違って混雑していません。天気の良い日はむしろこっちがおすすめかも。国立公園内にあるクレラー・ミュラー美術館は、周囲にカフェやレストランがありません。ランチやお茶をするなら、館内のレストランか庭園のレストランの2択です。

(左)彫刻庭園にあるレストラン/(右)メニューは美術館公式サイトでも見れます

雨の日は鑑賞できないジャン・デュビュッフェ『エナメルの庭』

彫刻庭園の散策に出発します。まずは、おそらくこの庭園で最も人気なジャン・デュビュッフェの『エナメルの庭』へ。中に入って作品内を歩くことができる立体作品です。美術館からも近い場所にあり、時間がなくてもこれだけは観ていくべき。館内には彫刻庭園だけの地図もあるので絶対にもらっておきましょう。ちなみに『エナメルの庭』はGoogleMapsにも載っています。外観が見えたときは「うおー!」てなりました!周囲をぐるっと回って入り口を発見。公式サイトによると雨の日は滑るということで鑑賞できないそうなので、晴天でラッキー!作品内に自分が入ってしまったような不思議な感覚になりました。端っこに座ってしばし鑑賞タイム。逆に天気が良すぎてすべてが眩しかった…白い世界。

(左)ジャン・デュビュッフェ『エナメルの庭』外観/(右)作品内部…天気が良すぎてすべてが眩しい

広大な庭園には多数の立体作品があり、散策しながら鑑賞していたら1時間半くらいかかりました。庭園をゆっくり散策するなら、やはり個人で来るのが良さそうです。

クレーラー・ミュラー美術館 KRÖLLER-MÜLLER MUSEUM
Address : Houtkampweg 6, 6731 AW Otterlo
※写真撮影可、ただしフラッシュ・三脚・自撮り棒は不可
ー公式サイトより抜粋ー
https://krollermuller.nl/en

公式サイトのFAQsには「写真撮影可、ただしフラッシュ・三脚・自撮り棒は不可」と記載されています。この美術館の公式サイトの個人的お気に入りポイントは、現在展示されている作品を確認できるところ。ご存じとは思いますが、ほとんどの美術館は収蔵作品のすべてを展示しているわけではありません。入れ替えたり、貸し出したり、逆に企画展で借りてきている場合もあります。これは実際に行くまで分からないことも多く、お目当ての作品が貸し出されていてがっくりしたことも…。でも、クレラー・ミュラー美術館では公式サイトの“Collection”で事前に確認できるんです!!これはありがたい!

クレラー・ミュラー美術館のシンボルのジャックさん

最後にジャックさんに別れを告げ、アムステルダムに戻ります。帰りのバス停は、行きで降り立ったバス停の道を挟んで向かいです。本数が少ないので美術館を出る前に確認しておきましょう。鑑賞時間は館内で2時間、彫刻庭園で1時間半くらいでした。アムステルダムから訪れる場合、移動時間とランチも考えると、ほぼ1日使っちゃう感じです。開館前に着いて、16時くらいにアムステルダム中央駅に戻りました。

ゴッホの『夜のカフェテラス』が観たい一心でやってきましたが、他のコレクションも素敵な作品が多く、何より彫刻庭園がとても気に入りました!ここまで来るのはちょっと大変だったけど、だからこそ静かに鑑賞できるわけで。美術館そのものが素敵な美術館です。オランダには素晴らしい美術館が多くてどこに行こうか迷う方も多いと思いますが、美術館好きなら一度は来るべき!私にとっては『一生に一度は行きたい美術館』でしたが、今度は『もう一度行きたい美術館』になってしまいました…。いつか絶対また!

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