旅する世界の美術館ガイド

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ウィーン造形美術アカデミー絵画館


正式名称は『Gemäldegalerie der Akademie der bildenden Künste』、日本ではいくつかの訳され方をしていますが、ウィーン市が運営する公式観光サイトに表記を合わせて『ウィーン造形美術アカデミー絵画館』として紹介します!ウィーンの造形美術アカデミーとは日本でいう美大で、過去には学生としてエゴン・シーレやムンカーチ・ミハーイも在籍していました。まだ何者でもなかったヒトラーが2回も受験に失敗したことでも有名かもしれません。とにかく!ここに訪れる目的はただひとつ!ヒエロニムス・ボスの三連祭壇画『最後の審判』の鑑賞です!!ウィーンには素敵な美術館がいっぱいあり、美術館好きにとっては何日あっても足りない魅惑の地。私もウィーン訪問3回目にして、やっとここに来ることができました。とはいえ、場所は美術史美術館から徒歩10分以内、分離派会館(セセッシオン)からは徒歩5分程度。全然行けます、ぜひ行きましょう。

ウィーン造形美術アカデミーに着いたものの…どこにあるのか絵画館

旅好きなのに迷子癖(方向音痴ともいう)のある同士の皆さんにお伝えします。Googole Mapsで『ウィーン造形美術アカデミー』もしくは『ウィーン美術アカデミー』のどちらで検索しても同じ場所を示してくれるので、ここまではOK!アカデミー正面入り口にはヒエロニムス・ボスの絵画の垂れ幕もあります。ただ、美術館ではなく学校のため、ここからどうすればいいのか戸惑うと思います…!観光客はほぼ見当たらず、学生さんばかりのなか、まずは堂々と正面入り口から入るべし。

(左)当然ながら学生さんがいっぱいいます/(右)正面入り口…堂々と入るのがポイント

内部に潜入したら廊下を右に進んでください。廊下の突き当たりに案内が出ています。『Gemäldegalerie / Painting Gallery』との表記と階段のマークを見つけたら、あとはひたすら階段を登りましょう。

(左)案内板は各階にあります/(右)階段から見下ろしてみた…現役の学校であることが驚きの重厚感

案内板から階段のマークが消え、右矢印に変わりました!絵画館のフロアに到着です。右に進むと、上に案内が出ています。余談ですが絵画館内にトイレはなく、校内のジェンダーレストイレを利用させていただく形です。このフロアだと、階段を登ってすぐ右手にあります。学生さんの落書きに政治的メッセージがあったりするのが日本とは違って興味深い。

(左)逆光で見えにくいけど奥に案内板あり/(右)この廊下を進むと絵画館…その前にトイレあり

さて、やっとチケットを購入です。一応ロッカーもあります。スタッフの方がとても親切で「ここのギャラリーを見終わったら、1階のホールの天井画を絶対に見ていってね!」と教えてくれました。

(左)チケット売り場とギフトショップ/(右)数は少ないけどロッカーあり

チケットを購入し、ついに絵画館へ…!入り口にある機械にチケットを読み取らせると自動でドアが開きます。ここまで観光客には一切出会っていません。

(左)チケットが素敵…!/(右)チケットを読み取らせると自動でオープン

『最後の審判』は最後のお楽しみか…!しかし他のコレクションも秀逸

ヒエロニムス・ボスの祭壇画はいちばん奥なので、まずは他のコレクションを鑑賞します。こちらの絵画館では現代アートのエキシビジョンも開催されていて、私が訪れたときはアナ・トーフの作品がありました。これも結構良かったです。

(左)アナ・トーフの作品群/(右)肖像画が並ぶ重厚感ある通路

作品数は多くないものの、素敵なコレクションです!とくにムリーリョの『サイコロ遊びをする少年たち(Two Boys Playing Dice)』は必見。他にもクラナッハやルーベンス、ピーテル・デ・ホーホなどの作品も。個人的にはゴドフリート・スカルッケンの作品が気に入りました。どうしてもこういう絵画が好きなんですよね…!ジョルジュ・ド・ラトゥールのような蝋燭やランタンに照らされている人物画。

(左)ムリーリョ“Two Boys Playing Dice”/(右) ゴドフリート・スカルッケン“The Peddler”

唯一無二の独創性と緻密な筆使い!実際に見てこそのボスの絵画

ついに最後の部屋です!ヒエロニムス・ボスの三連祭壇画『最後の審判』!以前にプラド美術館で『七つの大罪と四終』を観たのがボスに興味を持ったきっかけですが、これについてはいつかまた書ければということで。とにかく今回は三連祭壇画『最後の審判』です!!

(左)祭壇画のある部屋/(右)独り占めできる至福のひととき

左翼パネルは楽園で、禁断の果実を食べるアダムとイブや、楽園追放などが描かれています。中央パネルは最後の審判。でも審判よりも地獄が大半を占めていて、地獄には奇妙な生き物や怪物が。それらは奇抜なだけでなく、すべてに意図や意味があるんですよね。だからこそ教会もこの作品を受け入れていたわけで。キャラクター好きの日本人は「何これ!おもしろい!」となりそうですが、なぜボスがこれを描いたのが、何を表現しているのかも考えるとより鑑賞体験が深まるかもしれません。そして右翼パネルは地獄の風景。いやこれ、当時の人は「これが地獄か…!絶対に行きたくない!!」て思っただろうな〜。独創的な描写に気を取られがちですが、人間はかなり酷い目に遭っていますよ…!ちなみにこの祭壇画、3つのパネルの裏にもそれぞれ描かれているのでお忘れなく。裏も鑑賞できるよう、祭壇画は壁から離して展示されています。裏といってますが、祭壇画の扉を閉じると両翼が正面になるんですけどね。

(左)左翼パネルの裏『コンポステラの聖ヤコブ』/(右)右翼パネルの裏『ヘントの聖バボ』

裏も含めてしっかり鑑賞。この絵画館の入り口の逆側にも扉があって、そちらの部屋も鑑賞できます。私が訪れたときは現代アートのような作品が展示されていたのですが、もしかしたら学生さんの作品だったのかな。興味のある方はついでにどうぞ。最後にギフトショップを覗いてみたら、なんと三連祭壇画を再現したポストカードを発見!普段、ポストカードはあまり買わないのですが、これは欲しい…!ということで即購入。『最後の審判』に描かれている生き物のフィギュアもありました。

(左)祭壇画を再現したポストカード…裏面もすべて再現/(右)精巧なフィギュア…売れることはあるのか

帰る前に教えてもらった天井画のある1階ホールへ行ってみることに。ホールは誰でも鑑賞できるようで、チケットなどは不要。最初に入ってきた正面入り口の目の前にある扉をくぐるとホールです。

(左)学校の雰囲気を楽しみつつ1階へ…何のポスターかは不明だがデザインいい感じ/(右)ホールへの入り口

歴史を感じる素晴らしいホールです。きっとアカデミックな何かのイベントで使用するのでしょう。天井画はドイツ人画家のアンゼルム・フォイエルバッハによるもの。彼はウィーン造形美術アカデミーで教授をしていたそうです。

(左)歴史を感じるホール/(右)アンゼルム・フォイエルバッハ“Titanensturz in der Aula”
造形美術アカデミー絵画館 Gemäldegalerie der Akademie der bildenden Künste
Schillerplatz 3, 1010 Vienna
https://www.kunstsammlungenakademie.at/en/home/

チケットの事前購入は不要。ウィーンの他の美術館と比べて訪問者が少なく(おそらくボスに興味のある人しか訪れない)、ゆっくり鑑賞できました。もしや穴場美術館…?展示されている作品数は多くないので、祭壇画をじっくり観賞しても所要時間は1時間半程度かな。写真撮影について公式サイトに言及はありませんが、実際にスタッフに聞いたら撮影OKとのこと(フラッシュ不可)。

帰国後、ボスの作品を解説したタッシェン出版の本を読んでいたら、デューラーはボスの絵画について「それまで見たこともなければ想像したこともない」と語ったとありました。そう!ほんとにそれ!現代のように娯楽として本や映画、漫画のない時代、自身の想像力だけでこの不可思議な世界を描いたボスの絵画が後世に影響を与えたであろうことは想像に難くありません。現代だったら本やインターネットでいくらでも情報を得ることができ、参考にする作品も膨大にあります。15世紀にこれを描けるボスの凄さには震えます!ピーテル・ブリューゲル(ブリューゲル父)もボスに影響を受けたらしいし。確かに一部の作品でその傾向を感じます…!でも私はボスの創造性だけでなく、その緻密な筆使いも好き。実際の作品は本当に細かくて、1日でいいからレンタルして自宅でじっくり観れないものかと…無理だけど。仕方ないので購入したポストカードをルーペで見て我慢します。まあそれも楽しいか。

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